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≪がんの最新の検査・治療法を紹介≫もしや?に備えるがんノート 肺がん
肝臓がん
泉 並木 先生 指導泉 並木いずみ なみき 先生
<武蔵野赤十字病院消化器科部長>

 日本人の肝臓がんで圧倒的に多いのはC型肝炎からの発症で、肝臓がんの約72%を占めます。次に多いのがB型肝炎からの発症で、約18%です。肝臓がんは慢性肝炎から肝硬変を経て発症、あるいは慢性肝炎から直接発症しますが、慢性肝炎の治療は格段に進歩しています。このため、肝臓がんを防ぐには、健診などで肝炎ウイルスに感染していないかどうかを調べ、感染している場合は、慢性肝炎への移行や進行を抑えることが大きな決め手となります。

 肝臓がんは大量飲酒をつづけた場合にもおこり、脂肪肝がもとでおこるNASH(ナッシュ=非アルコール性脂肪肝炎)も原因になることがわかってきました。これらの病気のチェックも大切です。

血液検査で、ウィルス感染と肝機能のチェックを
一般的な検査
肝臓がんの精密検査
からだへの負担が少ない治療法が主流に
肝臓がんの治療法選択の目安
ラジオ波焼灼療法・・・高周波のラジオ波でがんを焼灼
エタノール注入療法・・・エタノールを注入して、がんを壊死させる
肝動脈塞栓術・・・血管を塞いでがんを兵糧攻めに
進行がんが治せることも・・・動注化学療法
最後の手段は肝移植 健康保険でできる例もある

血液検査で、ウィルス感染と肝機能のチェックを
肝臓がんの予防、早期発見には肝炎ウイルスの検査が欠かせません。肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査で簡単に調べられます。定期健診の項目に含まれていない人も、5年に1回くらいは肝炎ウイルス検査を受けましょう。また、一般的な肝機能検査も肝臓がんの発見に役立ちます。
肝臓の模式図
肝臓は重さが800〜1200gもある体内最大の臓器。肝臓がんでもっとも多いのは肝細胞がんで、全体の9割を占める。
肝臓がんを防ぐ検査のポイント
【Step1】5年ごとにC型およびB型肝炎ウイルスの検査を受ける。
毎年の定期健診などで肝機能を調べる。
とくにアルコールの過剰摂取、肥満、高中性脂肪の人はγ-GTPの上昇に注意。
【Step2】肝炎ウイルスに感染しているとわかったら
専門医を受診し、今後の検査の方針を指導してもらう。
【Step3】慢性肝炎あるいは脂肪肝とわかったら
医師の指示により、定期的に肝機能検査(血液検査)、腫瘍マーカー検査、腹部超音波検査、CT検査などを受ける。
肝臓がんの腫瘍マーカーとは?

 肝臓がんでは、腫瘍マーカーの「AFP」や「PIVKA-U」が上昇します。このため、慢性肝炎や肝硬変がある場合のがん検査や、がん治療後に再発を調べる方法として、血液検査でこれらの腫瘍マーカーを調べます。ただし、これらの数値は肝臓がんがなくても上昇することがあるため、がんの確定診断とはなりません。

一般的な検査
C型肝炎検査
 肝臓がんの約7割はC型肝炎からの移行なので、C型肝炎検査は重要。まず、HCV抗体検査を行い、陽性の場合はさらに詳しいHCVコア抗原検査やHCV-RNA検査を行う。ここで陽性ならC型肝炎に現在も感染していると考えられるので、ウイルスの型や進行度などをさらに詳しく検査。
肝機能検査
以下の項目で肝機能の異常を調べる。
AST(GOT)
ALT(GPT)
肝細胞が壊されると血液の中に流れ出てくる
γーGTP 飲酒や脂肪肝で上昇
血小板 10万/mm³以下になると、肝臓がんの発生率が上昇する
アルブミン 肝臓でしか作られないため、肝機能が悪くなると低下する
ビリルビン(T-Bil) 肝細胞が障害されると上昇
 
B型肝炎検査
 HBS抗原検査で、ウイルスへの感染を調べる。陽性の場合は、症状がなくても定期的に観察。
 

C型肝炎の見逃しは肝臓がんにつながる!

 肝臓がんの原因でもっとも多いC型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎を発症するが、自覚症状がないため気づかずに慢性肝炎に移行することが多い。慢性肝炎を放置すると、約4割は肝硬変へと移行し、さらに肝臓がんへと移行するといわれている。
肝臓がんの精密検査
 詳しい血液検査のほか、次のような画像検査でがんの有無や進行度を調べます。
超音波検査
 体外から超音波をあてて調べる。からだへの負担がなく、がんと血管の位置がよくわかる。ただし、肝臓が線維化すると見にくい。
超音波で見た肝臓がん(矢印で囲んでいる部分) 血管造影検査
 がんの治療にあたって、血管への広がりを調べるために行う。細い管(カテーテル)を太もものつけ根の血管から挿入して肝動脈と門脈に造影剤を注入し、CTで撮影。通常、入院して実施。所要時間は60〜90分程度。
CT検査
 造影剤を用いて腹部の横断面をCTで撮影し、がんの有無を調べる。所要時間は10〜15分。正確な個数の確認が必要な場合は、血管造影をしながらCT撮影するのがもっとも有効。
CT画像。白い部分ががん がんが黒っぽく写っている
からだへの負担の少ない治療法が主流に
肝臓がんの治療法は、従来、手術で切除するのが第1選択でした。しかし、最近は開腹しないでできる治療や、手術ができなかった進行がんに対する治療も行われています。なかでも、ラジオ波焼灼療法は、がんの数や大きさによっては手術と同様の効果を得られます。
肝臓がんの治療法選択の目安
 肝臓がんの治療法を選ぶときには、がんそのものへの治療効果とともに、がんの進行度、そして現状の肝機能が治療に耐えられるかどうか、また治療後に肝機能が大きく低下しないかどうかを検討して決めます。
※@肝臓がんの進行度(病期)のめやす
進行度 条件
ステージ1 @〜Bのすべてにあてはまる
ステージ2 @〜Bのうち、2項目あてはまる
ステージ3 @〜Bのうち、1項目だけあてはまる
ステージ4 1項目も合致しない
またはリンパ節転移がある
または離れた臓器に転移がある
条件@ 直径2p以下であるA1個だけであるB血管に入り込んでいない
※A肝機能の重症度分類(Child-Pugh分類=チャイルドピュー分類)
肝性脳症の有無、黄疸の指数(総ビリルビン)、腹水の有無、血中たんぱくの値(血清アルブミン)、凝固機能(プロトロンビン時間)を調べ、軽症のほうから ABCの段階に分類。
【ラジオ波焼灼療法】高周波のラジオ波でがんを焼灼
適用範囲 3cm以下のがんで、3個以内。血管への広がりや転移がない。肝機能重症度はAかB。

 AMラジオの波長よりやや長い高周波のラジオ波をあて、がんを焼いて壊死えしさせる。超音波画像や腹腔鏡で、がんの位置を確認しながら、がんに電極針を刺して通電する。この方法では確実にがんを死滅でき、からだへの負担も少ない。再発したがんの治療法としても有効。ただし、がんが血管や心臓の近くにある場合は組織を傷める可能性があるため、適用にならない。治療時間は1〜2時間。入院は5〜7日間程度。

※同様に熱でがんを死滅させるマイクロ波凝固療法は、ラジオ波の普及で、現在はあまり行われていない。

局所麻酔をして行う。がんの位置を超音波画像で確認し、電極針を皮膚から直接がんに刺して通電する。 治療前。白い部分ががん 治療後。がんが焼灼され、白い部分が黒くなっている
【エタノール注入療法】エタノールを注入して、がんを壊死させる
適用範囲 3cm以下のがんで、3個以内。血管への広がりや転移がない。肝機能重症度はAかB。

 局所麻酔をして、超音波画像でがんの位置を確認しながら、皮膚からがんに針を刺し、エタノールを注入して壊死させる。とくに2cm以下のがんに有効で血管や心臓の近くにあるがんにも行える。

 ただし、がんは1回の治療で完全には壊死しにくく、治療を何回か重ねる必要がある。このため、1回あたりの治療時間は30〜60分だが、入院期間は3〜4週間程度となる。

体外から直接がんに針を刺し、純度100%のエタノールを注入する。
【肝動脈塞栓術】血管を塞いでがんを兵糧攻めに
適用範囲 3cm以上のがんや、多発がんも可能。血管への広がりや転移がない。肝機能重症度はAかB。
 がんに酸素を供給している血管を塞ぎ、がんを兵糧攻めにして壊死へと導く。肝動脈にカテーテルを挿入し、先端に付けたゼラチンスポンジなどを留置し、血流を遮断する。適用範囲は広いが、がんを完全に壊死させる確率はあまり高くない。このとき、使用する造影剤に抗がん剤の塩酸リピオドールを混ぜて注入すると効果が高まる。治療時間は1〜2時間。入院期間は1週間程度。この方法でがんを小さくしてからラジオ波焼灼療法を行うこともある。 太ももからカテーテルを挿入し、肝動脈に進め、ゼラチンスポンジを注入して血管を塞ぐ。
【動注化学療法】進行がんが治せることも…

  進行がんや多発がんで手術などができない場合、大量の抗がん剤を持続的に肝動脈に注入してがんに送り込む動注化学療法が有効な場合があります。がんの根治はできませんが、進行を抑えられることがあります。

 リザーバー動注化学療法といって、袋を皮膚の下に埋め込み、抗がん剤を一定期間、持続的に送り込む方法では、リザーバー埋め込み後、通院で治療できます。抗がん剤にインターフェロンを併用すると、血管に広がっているような進行がんでも消失する例があります。

最後の手段は肝移殖健康保険でできる例もある

 肝臓がんで肝機能が大きく低下した場合、最終的な手段は肝移殖です。肝移植には脳死肝移植と生体肝移植があり、どちらも法的に認められています。ただ、日本では脳死肝移植はほとんど行われていません。生きている人の肝臓の一部を提供してもらう生体肝移植は、現在、大学病院を中心に約50カ所で行われています。

 生体肝移植は、以下の@Aのケースに限り、健康保険が適用されます。
 @単発のがんで大きさは5cm以下
 A3cm以下のがんでは3個以内

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